2010年9月20日月曜日

長月廿一日

おおむねKindleと格闘する一日。

青空文庫のデータをPDF化する青空キンドルを使って、幾つかのデータを落としてみたのだが、読めないものもある。また、「々」など一部の字は対応していないらしく、読み込めない。このあたりは今後のアップデートで解決される……といいな。


おとつい、3年に及ぶ留学生活を終えて帰国してきたMさんを迎え、H君と三人して晩飯を食ってきた。
中国語は上手くなったが、後はあまり変わっていないような彼女から、色々と面白い話を聞けた。
聞いたと思ったが、今こうして文章にしようとすると大して思い出せない。酒飲んでいたからというのが大きな理由だろうが、まぁ、仕方がない。

あまり役には立ちそうにない話は、しっかりと覚えている。これはいつもの通り。
どういう話からこう繋がったのかよく覚えていないのだが、とにかく、中国との付き合い方みたいな話題だった。
やはり政治的な意味での思想信条の自由がない国なので、色々と難しいところがあったりするそうである。
まぁ、留学生故にというのもあるだろうし、それ故に許されるというのもあるみたいだが。
チベットや台湾、新疆なんかのネタが代表格だろう。あまりおおっぴらに話せないわけである。
特に教授ともなると、建前をきちんと守らないと、自分の首が危なくなる。
なんだったかの折りに、彼女がそうしたネタを口にしたら、それっきり黙り込まれたこともあったそうである。
日本でいう近世以前(あちらでいう古代)を扱う場合は、歴史学でも比較的事実求是の原則が守られるはずなのだが、まぁ程度というものがあるわな。特に外国人にはそのあたりの微妙なラインは見えにくくても仕方がない。

で、そこからどう繋がったかやはり忘れたが、日本にとって、まずい状況に陥った上での中国との付き合い方みたいな話になった。
僕としては、中国は分断して内戦状態にあってくれた方が、日本にとってはまだマシ(良いと思っているわけではない)と考えており、そのように話した。
チベット近代史をやっているH君も似たような意見である。
Mさんはあまりお気に召さなかったようである。


以下は、Mさんとの会話とは直接の関係はない。

基本的に僕の政治、特に国際政治に対する見方は、友好とか理想とかに頼らないドライなものである。
損得のみ。相対的には、損か大損かという選択肢もあり。そんな二択に追い込まれないのがベストだが。
一番良いのは、上の表現に倣えば、得か大得かというものであろう。ここ数年よく聞く「ウィン・ウィン」というヤツである。よく中国政府の人間がこれを口にするが、わざわざこんな言葉を連呼するということから、逆にいかにこうした概念から遠くにいたのかよく分かると思ったりするのだが、これは穿ちすぎだろうか。
それはともかくとして、相互互恵関係というのは、それなりの理由がないと存在しない。互いの利害を補完し合う関係にないと、基本的に成立しない。
中国と日本とでは、このあたりで噛み合わなすぎると、僕は思っている。
中国にとって、日本と仲良くすることで得られるメリットと、日本を敵にすることによって得られるメリットがあるわけだが、歴史的経緯から、前者に比して後者の方が大きすぎる。
中国にとって、協力者としての日本の存在は絶対必要ではない。日本にとってもまた然り。日本の場合、現在の覇権国家であるアメリカの存在がなければ、また分からなくなるが。

それでも仲良くするだけならタダだし、他に面倒がないなら仲良くして悪い理由は全くないのだが、面倒が発生した場合はそうも言っていられなくなる。
今起きている尖閣問題なんかがその良い例だろう。仮に日本が全面譲歩したところで、尖閣以外の何かが問題になるだけである。中国は、圧力の高まる一方の国内を抑えるのに、反日という呪文を必要としているし、これを必要としなくなるということは、少なくとも現在の体制である限りは考えられない。
反日以外の呪文で国内のガス抜きが出来るなら別だが、そんなものは今までの歴史に登場してこなかったし、ガス抜きの必要がなくなるまで圧力が下がるということは、国内全てが「平等に」豊かになっているか、政治が致命的なまでに混乱──要するに共産党政権が崩壊──しているかのどちらかしか考えられない。
人類の歴史上、全ての人が貧しくなって政治が安定することはあっても、その逆がなかったことを考えると、前者の選択肢はあり得ない。後者については、当然共産党政権が望むはずがない。
よって、中国が反日という呪文を手放すことは考えられず、今後も似たような展開になることであろう。

逆の観点から推していくならば、あまりに中国の脅威が高まりすぎた場合、共産党政権の崩壊を目指すというのは、日本の立場からするなら検討していい選択肢となるはずである。
もちろん、その場合は厖大な難民や経済混乱など、非常に大きなリスクを伴うことになるので、安易に採っていい選択肢ではない。(そういえばMさんも口にしていた。ただし、僕からすればこれは対処可能な問題であると思う。コストは嵩むが)
が、損と大損とを比較するならば、話は別になる。日本を敵とすることを宿命付けられた国家がどんどん強大になっていくことを考えれば、状況次第ではリスクを取った方が良い場合もあろう。

日本を敵視することはやむを得ないとして、その上でそのような極端な手段を採らなくても済む体制というのはどういうものだろうか。
例えば韓国は、歴史的経緯から日本を敵視するという点では中国と同じだが、一面で双方とも深刻な危機を想定せずに済んでいる。これは双方がパックスアメリカーナに組み込まれているからであり、また政治的に劣位にある日本が、経済的には優位にあるというためであろう。
中国はこのいずれにも該当しない。新しい関係を築かないことには、この先きわめて不安定な局面に陥った際にどうなるか分からない。
日本の利己的な利益のみを考えるのであれば、中国を解体し、韓国とよく似た政治体制の国家を樹立し、その国と韓国とよく似た外交関係を構築すれば、安定する可能性は高い。
もちろん、これは中国が再び分裂状態に戻るということであり、中国、特に現在権力を握っている共産党にとっては大損である。何としてでもそれを防ごうとするだろう。
であるならば、それは交渉材料に使える。あくまで、中国が国家分裂した際のリスクを覚悟するという非常手段ではあるが、中国への分裂工作を婉曲な形で進めておくことは、別の案件でのカードに使える。

こうした露骨かつ対抗策を見いだしにくいカードというものは、その準備だけでもかなりの面倒事になる。中国や韓国が歴史問題で攻め立ててきたときに、日本が感じる不快感を更に強烈にしたものだろう。
よって、その準備はかなり慎重に行うべきだろうし、またその行使にはさらに慎重になるべきであろう。その意味では核兵器に似ている。
が、日本が表に出ない形でという条件を満たせるのであれば、ある程度は進めておいた方が、この先を考えると賢明なのではあるまいかと、僕は考えている。

実際、表に出ないだけで結構やってはいるみたいである。長くなりすぎるので今日はもう止めるが。

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