2011年9月24日土曜日

長月二十四日 ワインとトウモロコシ

今、ヒュー・ジョンソンというイギリス人の書いた『ワイン物語』(平凡社ライブラリー)という本を読んでいる。
タイトルのとおり、ワインの歴史を叙述的に述べた読みやすい本で、現在、ローマ時代にさしかかっている。
ところで、読んでいると気になる描写があった。

「同じ形のアンフォラが時として、ワインにも油にもトウモロコシにも使われた。」(上巻136頁)
「しかし、本当はトウモロコシの供給の方が心配だったという説も、同じくらい説得力を持っている。ブドウの木がトウモロコシ畑を侵蝕していたからである。」(同139-140頁)

はて、トウモロコシ? これは大航海時代にアメリカ大陸からヨーロッパに渡ってきた産物ではなかったっけ?
Wikipediaの記事によると、確かにコロンブスの時代にヨーロッパに持ち帰られたようである。
同じ記事を読んでいて思ったのだが、

コーン (corn) ともいう。英語圏ではこの語は本来穀物全般を指したが、現在の北米・オーストラリアなどの多くの国では、特に断らなければトウモロコシを指す。ただし、イギリスではトウモロコシを メイズ(maize) と呼び、穀物全般を指して コーン(corn) と呼ぶことがある。

とある。著者がイギリス人なので、原文が穀類一般(特に小麦)を示すつもりで"corn"としていたのを、訳者がトウモロコシの歴史について知らないために、「トウモロコシ」と訳したのではなかろうか。

つまるところは、よくある間違いということになるのだろうが、個人的にも心しておきたいところである。
「パンとサーカス」という言葉があるぐらいだから、ローマ時代にパンがあったことは間違いあるまい。そのパンと今のパンは違うだろということになるかもしれないが、キリスト教の聖餐だってパン(ただし酵母抜きのビスケットみたいなやつ)なのだから、トウモロコシパンではイメージがつきにくい。やはり小麦だろう。

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