2011年4月16日土曜日

卯月十六日 ハード&ソフトディフェンス

東日本の震災が起こるずっと前、首都移転論が活発に議論されていたころから思っていたことだが、東京への一極集中は、危機管理の観点からはかなりまずいのではないかと考えている。

僕が想定する「危機」の一番極端な例は、「核攻撃をくらっても国家機能を存続させられる」というもの。
首都がクレーターに変わっても、日本全体としては機能し、活動し続けられなければならない。

まぁ、ここまで極端な話でなくても、第二次関東大震災とか、もっと穏当な想定はいくらでもできるが、あまり意味はないと思う。自分にとって都合のいい想定でシミュレーションを行うことなど、まったく無意味であるからだ。
この意味で僕が批判されるべき例として考えているのは、ミッドウェー海戦前に行った図演で、史実で被るのと同程度の損害が出るとの結果が出ると、統裁役を務めた宇垣纏が損害を不当に低く裁定してそれを無視し、それがミッドウェーでの敗北につながったという話がある(ただし、Wikipediaの記事によれば、これは宇垣ひとりの判断ではないらしいし、またミッドウェーの敗北はこのことひとつに原因があるわけではない。まぁ、そうだとしてもシミュレーションの結果を捻じ曲げたという事実は動かないが)。
もちろん、不当に損害を大きくしても仕方がない。宇宙人が侵略してくるとかマグニチュード10の地震が起こるとかのあり得ない想定に対して心配するのは、労力の無駄というものである。
概して、後者は素人が、前者は玄人が、それぞれこうした罠にはまりやすいように思える。

今回の地震の場合、大地震と大津波との複合型の打撃だった。それぞれ、想定されていた(少なくともその可能性を示す専門家はいた)のだから、こうした災害は、想定されるべきものだったはずである。
想定されていたにもかかわらず、対処されていなかったのは、コスト的に割に合わないと判断されていたからだろう。こうした保険の類は、災害が起こらなければ無駄になるので、どうしても二の足を踏みたくなってくる。
民主党が仕分けで切った「スーパー堤防」も、コストエフェクティブネスではないから切られたわけである。実際、高さ10mの防波堤で日本を取り巻いたところで、高さ20mの津波が来たら意味がないとあっては、二の足を踏むのは当然であろうし、高さ40mの堤防となると、津波が来る前に日本が滅んでしまいかねない。

東京の石原都知事が主張する防災都市東京という概念も、基本的にはこのスーパー堤防と同じようなものではないかと思う。基本的な発想が、「想定の範囲内の災害」が起きるので、それに耐えられる街づくりを行えば大丈夫というものである。軍艦でいえば、ハードディフェンスというやつだ。
僕なんかは、同じく軍艦の防御思想でいえばソフトディフェンスを取り入れるべきではないかと考えている。

つまり、ある程度までの防御は整えておく(たとえば50年に一回起こる程度の災害には耐えられる)が、それ以上の災害が起きた場合、災害が起きた場所は一時的に機能を停止することを覚悟し、間接的な手段により防御する。基幹機能の分散と指揮統制システムの柔軟化が中心になるのだろう。
具体的には、首都機能を代替できるシステムを、日本の随所(最悪でも一か所)に設けておく。首都機能が停止した場合、「自動的」に指揮権は代替システムから発せられることとなる。また、上位からのトップダウンによらず、道府県レヴェルで一定の権限を振るえるようにしておく。おそらくは、道州制を採用してそこにこうした権限をゆだねる必要が出てくるだろう。
重要なのは、指揮系統にある程度の損害が生じた場合、こうした対応を「自動的」に行えるようにしておかねばならないという点である。中央の指揮能力が維持できている場合は必要ないが、そもそも中央に指揮権が集中しすぎていること自体がよろしくない。一定の権限は、現地の指揮権者(たとえば知事)などが、あらかじめ持っておくべきだろう。

結論は、地方分権を進め、非常事態用の法体系の整備を行っておくことである。相応のコストはかかるが、国中をハードディフェンスで鎧ってしまうよりは安上がりのはずである。
が、政治的なコストは非常に高い。中央集権の緩和や東京一極集中の見直しなどは、猛烈な抵抗を浴びることになるだろう。
民主と自民の大連立政権は、これを成し遂げるだけの能力を与える可能性を秘めていると思うが、まず、民主党の側に、小沢一郎を除いてここまでのグランドデザインを行える人物がいないこと、小沢と自民党の側は、ハードディフェンス志向があると予想されること(要するに土建屋万歳政策である)から、ソフトディフェンスへの移行は難しいのではないかと思う。

要するに、ここまでの文章は「チラシの裏」というわけである。2chでよく使われるもう一つの表現は、「ブログでやれ」なので、ブログで書いた。もちろん、もとよりよそで書いたりしゃべったりするつもりもないが。

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