2011年5月28日土曜日

皐月二十八日 研究進まず

研究が進まない……わけではないが、予定していたペースには遅れている。
原因は明らかで、仕事をしていないからだ。

どうも精神的活力が落ちているらしく、やる気が出ない……わけでもないが、出にくくて長続きしない。
仕事が終わって帰ってくると、酒飲んで寝る→3時間ぐらいして目が覚める→なんかゲームとかしているうちに夜が更ける→寝る→起床・仕事というサイクルになる日が結構ある。
このサイクル自体は、昨年ぐらいから起きるようになったのだが、これはこれで、一度寝てリフレッシュしてからもう一仕事、という感じもあって、それほど悪くなかったのだからして、まずいのは総合的な士気が低下しているという部分だろう。「なんかゲームとかしているうちに夜が更ける」の部分を変えればいいわけである。簡単に変わるなら苦労しないが、まぁ、この部分が努力の対象ということで。

で、進まないながらも、多少は進捗している。
あらためて、論文のゴールと章立てを確認してみよう。

論文の目的は、清代における財政構造の特徴を明らかにすることで、目標としては、官塩の供給と塩税の関係について検討を行うことである。
具体的には、清代中期ごろに官塩の供給量が人口の増減に対応しなくなり、また清代後期になって塩税の需要が高まると、塩の供給量の増加ではなく税率を高めることでそれに対応させようとするのだが、それはなぜかを明らかにする。
実際問題として、それは上手くいったのか? 上手くいかなかったとして、なぜ官塩供給量を増やすという、僕にはより合理的に思える手段を取らなかったのか? 清朝の財政構造は非常に硬直的に見えるのだが、塩政というカテゴリーにおいてもそれは見られるのか、見られるとして、それはなぜか? さらに、その硬直的に思える財政構造が、実際に存在していたとして、それは清滅亡後にどう変わったのか。あるいは変わらなかったのか。変わったとして、それはなぜか?
仮定と設問がやたら多そうだが、そのあたりは各節においてつぶしていくわけである。広東だけなら楽だったのだが、今回は中国全土というわけであり、中国の塩政は地域差が大きいことから、主要なものだけでも8つある行塩地それぞれについてチェックする必要があるので、かなりの作業量が予想される。というか、ものすごい作業量である。折れる心を継ぎなおしつつ、作業を進めるしかあるまい。

1.1. 各行塩地の塩引数の増減をチェック。
1.2. 各行塩地の塩引1道あたりの塩斤数を確認し、各行塩地の官塩供給量を把握。
1.3. 各行塩地の人口の増減を調査。

これにより、官塩供給量の調整が清代中期に停止したという知見が得られるはず。以下はその原因の検討。

2.1. 清代前期から後期にかけての塩税の推移を確認。税率が高まるはず。
2.2. 陶ジュや張謇ら、清代後期の改革を確認。

清代後期に入り塩税需要が増すと、塩税税率を高めて対応したこと、そしてそれを担保するべく官塩の競争力を強めようとしたが、非常に困難であり、特に張謇の改革は成果を出せなかったことを述べる。両者の違いは、改革時期もあるが、加えて各人の持つ強制力と改革対象の力の大きさである。

3.1. 民国初期の官塩供給量と人口、塩税税収の推移を調査。
3.2. 張謇やデーンが進めようとした改革を述べる。両者の違いは、背景に持つ強制力の違いであり、改革の方向性は大きくは異ならないはずである。

以上から、清代、そして清代の塩政を引き継いだ民国最初期の塩政は、非常に硬直的なものであり、それを崩すには外国列強による強制力が必要だったのではないか、ということが、今のところの結論となる。

壮大な話であるが、現在は1.1.の、それもいくつかの行塩地についての検討を進めているところである。
詳細な検討を終えているのは両広のみなのだが、やはり各行塩地の検証が行われていくと、各地独特の事情が見えてくる。
たとえば両浙では、太平天国の乱のため、清代後期になると塩引数などが一度リセットされる。清代を通して有力な開拓地だった四川は、比較的遅くまで小刻みな塩引数の増減が行われる。特に他の地域が海水から塩を生産するのに対し、この地では塩井からの生産になるので、新しい井戸が開かれたり、逆に結構井戸が枯れたりする。
他のいくつかの行塩地では、正塩の供給は乾隆年間ごろには固定化されるが、代わりに余塩の供給が増える。これは地域ごとの発給数などが厳密に定められた正塩とは異なり、比較的柔軟性が高くて、塩務官僚にとっては考課の対象となりにくいものである。
かつて塩務官僚が官塩供給量の増加を望まなかった理由として、財政的にその必要性が乏しかったことと、考課のハードルが高くなることを嫌ったことを挙げたのだが、その意味ではこういう余塩は扱いやすいはずである。

ま、こんな感じで行塩地ごとにじっくりとまとめていく必要があるわけである。次いで塩斤数のチェックなんかも必要だし、塩税とかは今の時点では考えたくもない。
多分、士気が高まらない理由の一つとして、どれだけの作業量があるのか掴めないということがあるのだろう。少しずつでも仕事が進めば、だんだん気分が乗ってくる……ことを望み、作業を進めることにする。


11月がデッドエンドらしいので、夏ごろまでには目処を立てておかなければならないのだが、なかなか大変そうな気がする。

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